「パソコンが品薄で大変?」業界の裏側と、私のところで困っていない理由

AI

はじめに

先日、30年以上のおつきあいのあるお客様から、こんな質問をいただきました。

「歯医者に聞いたんだけど、最近、メモリーなどが不足していてパソコン業界やIT業界は価格高騰や品薄でたいへんなことになっているそうですね。本当ですか?」

私は正直、少し戸惑いました。確かにSSDやM.2の価格が上がっているのは感じていましたが、「たいへんなことになっている」という実感はなかったからです。DELLの即納モデルで欲しいものは普通に買えますし、学校から依頼を受ければすぐに納入できています。

でも、ここで気をつけなければいけないことがあります。

長年この仕事をしていると、「自分の経験が正しい」「素人の話は信用できない」という思い込みに陥る危険性があるんです。もしかしたら、私が情報不足なのかもしれない。そう思って、改めて業界全体の状況を詳しく調べてみました。

調べてわかったこと:歯医者さんの話も正しかった

結論から言うと、歯医者さんがおっしゃったことは事実でした

2024年から2025年にかけて、パソコン業界では確かに大きな動きがありました。

AI需要の爆発的な増加により、高性能なメモリーやGPU(グラフィック処理装置)の需要が急増しています。特にNVIDIA製のGPUは入手困難な状況が続いており、一部の半導体部品では価格が上昇しています。

大手メーカーや学校などの大口取引先では、数ヶ月待ちというケースも実際にあるそうです。

つまり、歯医者さんが耳にされた情報は、業界全体のニュースとして報道されている内容で、決して噂やフェイクニュースではなかったのです。

では、なぜ私は困っていないのか

ここが今回、一番お伝えしたいポイントです。

歯医者さんの話も正しい、私の実感も正しい。一見矛盾しているようですが、実はどちらも正しいんです。なぜなら、見ている景色が違うからです。

仕入れルートの違い

大手企業や学校は、メーカーと直接取引をして大量発注します。これは計画生産という仕組みで動いているため、発注から納品まで時間がかかります。特に教育機関の場合、予算執行の時期や入札という手続きもあり、さらに時間がかかることもあります。

一方、私のような小規模な会社は、複数の流通ルートを持っています。メーカーの即納モデルを活用したり、在庫を持っている販売店から仕入れたりと、小回りが利くんです。

必要な製品の違い

大手企業や学校が導入する場合、最新スペックで仕様を統一して大量に導入する必要があります。「同じものを100台」という注文になるわけです。

私の場合は、お客様の用途に応じて、その方に最適なスペックを個別に選びます。「最先端」でなくても、用途に合っていれば十分な性能のパソコンはたくさんあります。

市場の見方の違い

AI向けの最先端部品は確かに品薄です。でも、一般的な用途のパソコンに使う部品は、比較的安定して供給されています。

「野菜が全国的に高騰」というニュースが流れていても、「うちは地元の農家から直接仕入れているから、特に値上がりしていないよ」という八百屋さんがあるのと同じです。

どちらも嘘ではなく、流通の仕組みや規模の違いなんです。

権威ある人の話と、長年の経験、どちらを信じる?

今回のお客様は、こんなジレンマを抱えておられました。

「長年つきあいのある○○さん(私)の言葉も嘘ではないだろうけど、信頼している歯医者さんからの話だから、その話も本当なんだろう。頭の中が混乱している」

これ、実はとてもよくあることなんです。

お医者さんや先生と呼ばれる方は、社会的に信頼されているので、その方の言葉には重みがあります。一方で、長年おつきあいしている私のことも信頼してくださっている。どちらの話も信じたいけど、内容が違うように見える。

でも、今回わかったのは、どちらも正しいということでした。

大事なのは、「誰が言ったか」ではなく、「どういう立場で、どういう情報源から、どういう視点で見た話なのか」を理解することなんです。

長年の経験が落とし穴になることもある

今回、私自身も大きな学びがありました。

まず、最新の情報には常に目を光らせて「今」の現状をしっかり把握しておかねばならない、ということでした。

パソコンの販売とサポートを40年近くやっていると、自分の経験と実感が絶対だと思い込んでしまう危険性があります。「俺は現場を知っている。ニュースなんて大げさだ」と。

でも、それは視野が狭くなっている証拠かもしれません。

今回、改めて業界全体の状況を調べたことで、大手企業や学校の仕入れ業者さんが「数ヶ月待ち」とおっしゃる理由もよくわかりました。それぞれの事情があって、それぞれが正しいんです。

お客様の疑問こそ、宝物

考えてみれば、お客様からの「歯医者さんにこう聞いたんだけど」という一言がなければ、私はこんなに深く業界全体を見直すことはなかったでしょう。

お客様の素朴な疑問や、一見的外れに思える質問こそ、実は自分の視野を広げてくれる宝物なんです。

「困ったときの右クリック」「困ったときの再起動」「困ったときのYouTube」「困ったときのChatGPT」

私の講座でよくお伝えしている言葉ですが、今回は「困ったときのお客様の疑問」でした。

まとめ:情報は多角的に見る

今回の出来事から学んだことをまとめます。

  1. 業界全体のニュースと、個別の現場の実態は、どちらも正しい
  2. 立場や規模によって、見えている景色が違う
  3. 長年の経験は強みだが、思い込みの危険性もある
  4. お客様の疑問に真摯に向き合うことで、自分も成長できる

「パソコンが品薄で大変」というニュースを見たら、「誰にとって」「どういう意味で」大変なのかを考えてみてください。

そして、もし疑問に思うことがあれば、遠慮なく専門家に聞いてみてください。きっと、思いもよらない視点が見えてくるはずです。


追記

この記事を書いたあとに特にメモリー関係で調べたところ、急激な変化の現状を再確認しました。

この記事や状況を見ると今まで一般のユーザーや無関心だったりした人が大騒ぎするのも理解できました。

確かに、今回のメモリー騒動は深刻な内容ですね。

ただ、何かひっかかるものがあります。

例えば、今年の米騒動がすぐに浮かんできました。

古くは、2007年のマイクロソフト社がOfficeの拡張子を変更して、ユーザーを困らせて半強制的にOfficeの買い換えを促した、という事例。

最近では、コロナの時のマスク不足での大騒ぎ。

今、Windows10のパソコンがまだまだ市場に残っています。

もし、誰かがWindows10のパソコンを半強制的に買い換えさせることを画策したら。
しかも、高く買い換えさせることができたら大儲けですよね。

誰もが納得する理由、大義名分・・・「AIの普及でメモリーが不足」

メモリーって、とても小さい部品なので在庫するとしても、お米のように場所をとりません。

メモリーは価格操作が簡単な魔法のツールだ、と考えると、今の状況が別の観点で見えませんか?

転売が今問題になっていますが、メモリーは保管場所をとらないし、利益率も高いので、転売の商材としては、うってつけですよね。

私がマイクロソフト社とアップル社から学んだことは、「困らせて儲けるビジネスモデル」と、「欲しがらせて儲けるビジネスモデル」がある、ということでした。

例えば、

ユーザー:エクセルは古くても業務に支障がないので買い換えなくても大丈夫。
エクセル:拡張子「.xls」を「.xlsx」にすれば、古いエクセルユーザーは困って買い換える

私は、このときに、そういう手を打ってきたか、と思いました。

Windows10ユーザー:どうせすぐに買わなくてもまだ使えるので大丈夫。
誰か:メモリー不足になれば、パソコンが高くなったり買えなくなると困るので買い換える

「誰か」が誰なのかはわかりませんが、公式通りと思ってしまうわけです。

あとは、客観的な数値、データを調べる必要があります。
ざっくり簡略化すると
❶生産できるメモリーの数、量
❷一般のパソコン用に必要なメモリーの数、量
❸AIのためにサーバー用に必要なメモリーの数、量

今までは、
❶=❷

現在は、
❶=❷+❸

極端な話し
❶=❸
こうなると、一般のパソコン用に必要なメモリーはなくなるので、パソコンは購入できなくなります。

確かにAIのためにデータセンターやAI用のサーバーなどの増設でメモリーが必要になるのは間違いありません。

ただ、その数が、一般のパソコンの台数と比較してどれだけ大きいのか?

もし、今までの一般のパソコンで必要だったメモリーの半分(50%)をAI用にまわさないといけないなら、市場に出回るメモリーの数、量は半分になるので、当然、メモリーの価格はあがり、パソコンの代金もあがります。

しかし、もし、全体のメモリーの数、量の比率の中でAI用のメモリーの比率ガ低ければ、本当は一般のメモリーの価格も少しは上がっても、急上昇のカーブにはならないはずです。
ここでもし、メモリーの価格が急上昇するなら「AIの普及でメモリーが不足」という魔法の言葉で誰もが「メモリーは高いのはやむを得ない」と納得させられてしまうわけです。

私にはわかりません。

ただ、何かがひっかかります。

この引っ掛かりや仮説が正しいかはわかりませんが、少なくても市場のメモリー価格は間違いなくあがっているので、今後の推移を注意深く見ていく必要があることは間違えありません。

私は、「後出しじゃんけん」はしないで、できるだけ途中経過の段階での考えを伝えています。

iphoneが登場してすぐに使い始めて、皆に革命的なすごい製品が出た、と言ったら「新しもの好き」と相手にされませんでした。

ガラケーを愛用していると「時代遅れ」と笑われます。

ChatGPTが登場してすぐに、「iphoneのときよりもっと凄いことになる」と言ったら「新しもの好き」とからかわれました。

今回のメモリー騒動も、「何か裏があるのかもしれない」というと「AIのこと理解していない無知なやつだ」と言われそうです。

江戸時代からある米騒動は、今の時代になっても全く同じ構造なんだと思います。

今回のメモリー騒動、はたしてどういう結末をむかえるのでしょうね。

あくまでも個人的な見解ということをご理解のうえお読みください。

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