私の主義主張の一つに、「アナログはご主人さま、デジタルはアナログに使える忠実な召使い」という考えがあります。
ここのところ、スマートフォンの普及のスピードには、目を見張るものがあります。
スマートフォン・・・別にスマートファンのせいにするわけではありませんが、おととい、大切な人の訃報が届いて、ある人が、携帯からスマートフォンに機種変更していなければ、今まで通りメールの問合わせがスムースにできて、訃報の前にその方に会えて、生前に最後の会話ができたのではないか、と思うと、別の連絡方法をとらなかった私が悪いのですが、悲しくてなりません。
その大切だった人のことをずっと思い出しているのですが、常々伝えたかった内容を、今朝、一気に書き上げました。
テーマは、「アナログとデジタルの関係」です。
その大切だった方は、チームリーダーであり、仲間であり、兄さんのような存在であり、そして、私の人生のお師匠さんのような方でした。
ある時、その人に、「私が受けた恩は、どうやって返せばいいですか?」の問いに、「私も、いろいろな人から教えを受けてきた。それを、その本人に返しては、そこで終わってしまうので、それを、他の人に伝えてあげて欲しい、と言われたので、そうしてきただけだ。もし、そのような気持ちがあるなら、同じように、他の人に伝えていって欲しい。」と教えてもらいました。
昨年の聴神経腫瘍の摘出のための24日間の入院期間に、不思議な体験をしたのですが、現在、そのときの出来事を忘れないようにまとめあげでいます(記憶より記録)。
具体的には、私の行動は、約100の法則で導かれていることに気づいたのですが、その100の法則を、なんとか、分かりやすく伝えたいと思ってまとめているところなんです。
今回の「アナログとデジタルの関係」も、その100の法則の中の一つですが、その中でも、特に重要な基本法則の一つです。
ただ、その考えを公開することには、いろいろな迷いがあったのですが、今回、その方に手を合せてご冥福を祈っているときに、このことを私に話す声が聞こえた気がして、ならば、いろいろな形で伝えていこう、と決意して帰ってきました。
文章はかなり推敲の余地があるのですが、伝える機会を失うよりはいいかな、と思い、公開しました。
私のブログは、一方的で、コメントも受けないようにしていますが、今回のこの書き込みについては、もし、ご意見などいただけるようでしたらお願いしたいと思っています。
画面上に、ご意見・お問合わせで、メールが届くようにいたしました。
テーマは「アナログとデジタルの関係」
タイトルは「時代遅れ」です。
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——– 時代遅れ ———
王様、どうなさいましたか?
侍従は尋ねた。
最近、何かというと、デジタル、デジタルと騒ぎ立てて、アナログを小馬鹿にする者が増えておる。
わしの携帯も、せっかく、電話とメールを使いこなして不便をしていないのに、やれ、iphoneだのスマートフォンだのにしろ、王様は時代遅れだ、と笑うものがおる。
王子の世話役、教育係を選ぶのに、やはり、デジタルの達人を選ぶのがいいのかのぉ?
なぜ、悩まれているのですか?
わしは、何かひっかかるのじゃ。
遠い記憶のかなたで、誰かが、もっと大切なものを私に語りかけてくれているようなんじゃが、どうしても思い出せないのじゃ。
王様は、王子に何を期待しておいでですか?
これからの時代は、デジタルが主流になるであろうから、やはり、デジタルのことをたくさん学んでもらわねばならん。
では、王様は、民に慕われておいでですが、王子が王になるために、一番大切だと思われているのは何ですか。
うむ、それなんじゃ。
先ほどの記憶のかなたの、誰かの語りかけに答えがあるようなんじゃが、それが、私にもわからんのじゃ。
だから、王子の教育係を選ぶのにも、迷いがあるのじゃ。
では、その王様の探している答えがわかる者を、国中から探し出してみたらいかがですか?
そんな方法はあるものか?
わし自身が、その答えを知らないのじゃぞ。
いえ、王様は、その答えをご存じのはずです。
ただ、その答えを王様ご自身が知っていることを、王様が知らないだけなのだと思います。
どういことじゃ?
よく、不知の知と申しますが、それの逆で、知の不知、とでも申しましょうか。。。
お主は、知っておるのか?
私は、王様がお生まれになってから、ずっとお近くでお仕えして、35年になります。
王様のことは、存じ上げているつもりです。
では、そなたに、今回の件は任せるので、私が気づいていない答えを見つけだしてくれ。
承知いたしました。
侍従は、次の内容の告知をした。
このたび、我が国1番の知恵者を探すための試験を行う。
課題は2つ
1.王様に一番大切なものは何か?の回答
2.会場に用意してある道具を使って、誰もがうなるほどの感動ある作品を完成させること
侍従は、それからある村に住む年老いた女性のもとを訪ねた。
侍従は、その女性に向かってこう話した。
「あなた様のお力をまたお借りする時が参りました。」
「私は、見ての通り、杖をついて歩くのが精いっぱいの年よりです。
何をおっしゃるのですか。」
「王様は、悩んでおいでです。その悩みを解決できずにお苦しみになっています。」
「今の私には、王様に何もしてさしあげられません」
「35年前と同じように王様をお助けできるのは、あなた様しかおりません」
「今回、出した課題を見て下さい。」
その課題を見て、しばらく考えてから、こう言った。
「こんなへんぴなところまで、わざわざ訪ねてきてくれてありがとうございます。」
「わかりました。参加させてもらいます。」
今回の試験で国1番の知恵者と認められた者には、名誉と富が与えられると知ると、国中から我こそは、という腕に自慢の者が集まった。
そこで、侍従は、年代別に予備選考を行って、最後に残った者だけを王様が見守る決選会場で2つの課題に挑ませることにした。
ところが、年老いた女性の70代以上の部には、その女性しか応募がなかった。
会場に用意してあるというパソコンなどのデジタル機器を使いこなすことができないので、初めから諦めてしまっていたからだった。
課題の1から始まった。
誰もが、用意してあるパソコンに向かって、すさまじい勢いで論文を書き上げ、印刷して提出した。
さすがに、選び抜かれただけあって、その内容もさることながら、印刷にもいろいろ工夫がしてあって、それを見た王様は何度も、うーん、とうなり感心した。
ただ、どれも素晴らしいが、誰の回答が1番かの判断に迷い、困ってしまっていた。
そんな中、最後に残った唯一、紙に鉛筆で書かれた回答用意があった。
その紙には、たった1行の文字が書かれているだけだった。しかも、漢字を忘れたからだろう、何度も消したは直してあった。そして、結局最後には、ひらがなだけで書いてある回答用紙だった。その回答用紙の文字を一文字一文字ゆっくりと追っていった王様の顔色が変わった。
穏やかだった王様の顔色が、みるみる険しくなり、固まってしまったのだ。
侍従は訪ねた。
課題1の回答者の中で一番優れた回答者は、決まりましたか?
王様は、ただ、首を縦に振り、「この番号の者を」とだけ言うと、あとは天を仰ぎ黙りこくってしまった。
課題2の選考が始まった。
何万人も入る会場の真ん中には、年代ごとに選び抜かれた精鋭たちが集まり、彼らの作品の出来上がりは、スクリーンに映し出され、また、全国にテレビとインターネットでリアルタイムで映し出されていった。
彼らは、会場に用意されていた道具、パソコン、デジカメ、ビデオカメラなどなど最新で最高のデジタル機器を選び、作品を作り上げていった。
映し出される映像に王様も釘付けになるほど、誰もが、デジタル機器を使いこなしていて、それはもう素晴らしい腕前だった。
誰の目にも、デジタルの素晴らしさは、疑いの余地はなかった。
ところが、そんな中、王様はあるスクリーンの光景に目を疑った。
そこには、ただ紙と鉛筆と筆と硯だけが机に置いてあり、そこに座っているのは、弱弱しい年老いた女性だったからだ。
周りの者は、誰がこんな者を会場に入れてしまったのか、間違いではないか、と騒ぎ始めた。
ところが、次の瞬間、今までのデジタル機器の作品が仕上がるのを感嘆の声で見ていた会場の皆が、水をうったようにシーンとなってしまった。
女性は、まず、紙に鉛筆で獅子の子にねずみ採りを教えている母猫の絵を描いた。
獲物を狙っている姿、それは、まさに、そこから抜け出して、今にも動きだしそうな絵だった。
そして、次に、筆で、龍の絵を描きだした、
ただ、墨の色一色だけで、他の色を使っているわけではないのに、真っ青な大空に真っ赤に燃える龍が駆け巡るように描き出されていった。
課題2の時間が終わった。
会場では、不思議な空気が流れていた。
誰もが、改めて、デジタルの素晴らしさを実感した。
自分たちも、彼らのように使いこなしたい、と思った。
できあがったどの作品も素晴らしくて、甲乙がつけがたかった。
しかし、誰もが、こう思った。
2番、3番は迷うけど、1番に選ぶ作品は、これしかない、と思っていた。
侍従が王様に訪ねた。
王様、決まりましたか?
決まった。
「しかし、困ったことがおきた。今回の課題1と課題2の1番の中からただ一人を選ぶとなると、これが難しい。
まずは、それぞれの1番に選んだ者を私が直接会って確かめたいことがあるので、呼んで欲しい。」
しばらくして、王様の待つ部屋に、王様が選んだ課題1と課題2の1番の者が通された。
王様が侍従に言った。
「なぜ一人しか来ないんだ。私は、課題1と課題2の1番の者を連れてくるようにと言ったはずだ。」
「王様、この者が課題1と課題2の1番の者でございます。」
なんと、そこにいるのは、杖を使って立っているのがやっとの、弱弱しい女性だったからだ。
王様は、すぐに楽に座れる椅子とテーブルを用意させ、座ってもらった。
そして、侍従にも、椅子に座ってもらって王様はこう話した。
「今日、やっと、遠い記憶のかなたの声を思い出すことができました。母さん」
35年前、国に動乱が起きたとき、侍従は、まだ乳飲み子だった王様をこっそりと城外に連れだして、逃げ延びた。
何日も何日も、飢えと寒さに戦いながら、ある村にたどりついた。
追ってが迫っている。
かくまっていることがばれれば、その村人全員が皆殺しにあうかもしれない。
その時に、二人をかくまい、乳をあげて育ててくれたのが、その村でありその女性だったのだ。
動乱が終わり、二人が城に戻れるようになるまでの6年の間、魚の採り方、狩りの仕方、稲や野菜や花の育て方などなどの生きるための知恵の全てを教えてくれたのが、その女性だった。
ひ弱な母猫でも、ライオンの子どもに乳を与えて、育てることはできるし、狩りの仕方や、百獣の王の心構えを教えることはできるのよ。
また、「王様に一番大切なのは、民を思いやる心なのよ」と教えてくれたのも、その女性だった。
しかし、長い動乱がおさまり、王様が城に戻れるようになり、迎えがきたその日、あまりに悲しい出来事、現実に直面してしまった王様は、その時の記憶を封印してしまったのだ。
「母さんの課題1の回答ーおうさまにいちばんたいせつなものは たみをおもいやるこころ-この言葉を見てどこかで封印が解けるのを感じました。」
「でも、霧が晴れはじめても、まだうっすらとしていて、確信とまでは言いきれませんでした」
「母さんの課題2の回答の絵を見て、はっとしました。そうなんだ、私は民を思いやれる心をもった王様になりたかったんだ、」と。
侍従は言った。
「王様は、そのことをずっとご存じでした。そして、すでになられています。ただ、そのことを王様ご自身が知らなかっただけなんです。」
「思い出しました。母さんは、いつも地面に木の枝で上手に絵を描いてくれていましたね。」
「絵を売ったお金で、私達を育ててくれたんでしたね。」
「私には、母さんが魔法使いで、紙や鉛筆や筆が魔法の道具に思えてなりませんでした。」
侍従は聞いた。
王様、迷いは消えましたか?
消えた。今回の件で、改めて、デジタルの素晴らしさを痛感した。やはり、今後もデジタルの分野を発展させるのが大切だと思った。
しかし、アナログの素晴らしさも、それ以上に実感した。
どっちが重要とかどっちが大切かではなく、どちらも我が国には必要で大事なことなのだ。
大切なのは、それを使い分けて、使いこなすことができる役割分担の能力なのだ。
今回、70歳以上のエントリーが、他に誰もいなかったが、実は、同じようにすごい技の持ち主、職人技の持ち主がいるはずだと思った。
なんとしてでも、その方々の体験や知恵をお借りしたいものだと思った。
今後、母さんには、今回の課題の1番として、私と一緒にいろいろと登場してもらいますので、どうかよろしくお願いします。
「私のような杖のついた老いぼれが、王様と一緒になんて、恐れおおいことです」
「大丈夫。母さんは、素敵な魔法使いなんですから。皆に母さんの魔法を見せて我が国に奇跡を起こすのを手伝ってください。」
[完]